フジロック07まとめ2(というかギャロのこと)

今年のフジロックの感想で、
これを書かずにはおれない、というほど
最も強烈に印象に残ったのがVincent Galloだ。


Gov't muleを途中で切り上げてやってきた
2日目の夕暮れ時のオレンジコートは半分くらい埋まっていて、
しばらく待っていると拍手とともにギャロと2人のメンバーが登場。
何となく太ったような気もする。
すぐに椅子に腰掛けてギターを弾き始める。
ステージの右後方を向いて。


みんなが注目するなか黙々とギターを弾くギャロ。
ステージの右後方を向いたままで(笑)


10分経過しても20分経過しても
ギャロはずっとメロディーのない静かな音を出し続け
他のメンバーはアンプのつまみをずっといじり続け
リズムマシーンのループやフィードバックを操作したり
たまに楽器を弾いたりする。
後ろ向きだ。
音楽的な方向の話ではない。
全員が観客にずっと尻を向けているライブだ(笑)


50〜60年代ヴィンテージ機材の
コレクターとしても知られるギャロのこと、
(ちなみにRHCPのジョンも、ソロアルバム制作時に
ギャロから機材を買ったり借りたりしてた)
ステージに並んでいる楽器やらアンプやら
レスリースピーカーやらも全て持ち込みに違いない。
ただ、僕の観てる間は置いてあるオルガンもサックスも鳴らさなかったし
レスリースピーカーは所在なげにくるくる回転してるだけだった。
(最後まで観た同行のSに聴いたところでは
「スー」とか「ポー」とか何音か鳴らしたらしい・笑)


ちなみに今、久しぶりにギャロの『When』というアルバムを
聴きながらこの文章を書いているが、やっぱり曲も音もすごく良くて、
みんなこんな感じを聴きにやってきたんだろうなあと思う。
多分ライブでも実際にはすごいアナログでイイ感じの音が出てるんだろう。
ただ、即興要素のみで、あの演出で
野外の、ロックフェスで演奏してしまうというのが
ギャロの偏屈で頑なアティテュードを表していて
(宿でSとの感想大会を開いたところ、
「わはははは。ギャロの家でやってるんじゃねーんだから!」という結論に達した)
そうなると観客は「演奏を聴いて楽しむ」というよりも
だんだん「ギャロのロックフェスに対する姿勢を見てドキドキする」感じになってくる。
ちょっとはそういう面も期待していたけど予想以上だった。


30分以上過ぎて
僕もだんだん「ああ、これはある意味苦行だ、苦行なんだ」と
思い始めて、逆に観客の反応(みんなどうしていいか分からずに
ボーっとしている)を楽しんだり、
「主催者はギャロにロックフェスがどういうものか説明しなかったのか」とか
「太ったから顔を見せたくないのか」とか
色々と想像しだしたりして、
そうなると笑いがこみ上げてきて一人でニヤニヤしてた訳ですが
しばらく経ったところで
スピーカーの前で聴いてた子が苦行に耐えられずに倒れて
救護テントに運ばれていった。
破壊力抜群だ。ギャロのライブは。


僕も40分くらい聴いたところで出てしまった。
ダメだ。修練が足りない。


後で聞いたのだが、
サウンドチェックもギャロ自身が入念に行い、
照明にも細かく注文をつけていたらしい。
あと、リハではキチンとしたシャツを着ていたらしいのに
本番では下着みたいなタンクトップだった。何故だ?


とにかくあの自己一貫性とサービス精神の無さに感服だ。
04年のルー・リードも凄かったらしいが(僕は行ってない)
これもフジロック史上に残るライブなのではないだろか。


ああ、そうか「観客に迎合しない」ということでは
ギャロが一番「ロック」なのかもしれない。
そういうことだったのか!(笑)