ギター事始め・中二病・サウスブロンクス

昨日の日記のギターの話で思い出したので
初めてギターを手にした時のことでも書いてみようかなと思う。



14歳の夏休み。
暇を持て余していた僕は去年から自室となった2階の部屋の
押し入れをゴソゴソと探っていた。
父の実家のこの家は、古い家によくあるように
長い年月をかけて増改築を繰り返していたので
家の造りも押し入れの中も、
何もかもがカオス状態で詰め込まれていた。
特に何の期待もせずに布団袋を押しのけたところで
一番奥に木製の何かがあるのを見つけて
引っ張りだしてみるとそれは埃まみれのギターだった。


祖母に尋ねると
これは昔この部屋で暮らしていた叔母が買ったものらしく
安物の、メーカー名も良く分からないような代物で
パーツはサビまくり、弦は伸びきってしまっていたのだが
何となくこれを弾いてみようかなという気がした。
気持ち悪いほどの自意識と、ふがいない自己実現力という
いわゆる「中二病」のど真ん中にいた僕は
ギターを弾けるようになることで
何か自己実現が出来るような気がしたのである。
…というのは大げさで、
本当は、まあ夏休みだったし、
なにか新しいことでも始めてみよう、くらいの気持ちだった。


さて、弾くためには弦を張り替えなければならないのだが
やり方も分からないし、そもそも僕の住んでいた街には
楽器屋なんてないのだった。
しばし一考したところ、
近場でもう少し大きい街、綾瀬のレコード屋
楽器やグッズなどを売っているのを
何となく見た覚えがあったので
僕は自転車で綾瀬に向かうことにした。


「綾瀬」。
知っている人は知っていると思うが
足立区と葛飾区の境目にあるこの街は
「東京のサウスブロンクス」とも称される
不穏で愚連な空気を漂わせた街だ。
僕が小学生の頃などは、
「綾瀬に行くときは
靴の中などにお金を分散させて行かねばならない」
というクラスの男子全員が守る不文律があったほどで
(2回に1回はゲームセンターでお金を巻き上げられるからだ)
ならば何故そんな場所にノコノコと出かけていくのか、
というのは今になっても甚だ疑問なのだが
たぶん東東京の繁華街特有のスリリングな空気と
あの年代特有の「なんか悪そうでヤバそうなもの」に
憧れる熱にやられて
葱を背負った鴨みたいにみんな綾瀬に向かっていたんだと思う。
まあ、そんなビーバップタウン・綾瀬に向かった訳だ。
(オーバーに書いてますよ。本当はいい街です)



長いので1回切ります。
続きは明日。