メリー・チキン・クリスマス

この日記で毎年、クリスマスがどんなに素敵で
どんなに好きかを書いているのですが
今年は、縁あって一日だけ渋谷のど真ん中で
フライドチキンを販売するアルバイトをすることになりました。
しかも夫婦二人で。


30代でのこんなクリスマスの過ごし方はどうなのか。
ワーカホリック」あるいは「生活苦」
随分世知辛い言葉がすぐに頭に浮かびますが
そんな負のクリスマス・キャロル
2006年の枯れすすき的な想像は気にせずに
ただ、一度でいいからクリスマスのキャストではなくスタッフになって
あのキラキラしたハピネスの洪水の中に
身を置いてみたかった。という僕の願いが叶ったことに感謝を。


名前は詳しく書けませんが
サンタにも似た髭眼鏡白スーツの老紳士が出迎える
高名な鶏の唐揚屋に到着し、
赤い帽子を被って店頭に出てチキンを売る。
行列、ショッピングバッグ、電飾、
カップル、ファミリー、クリスマスソング、鶏。
日本のクリスマスが俗の極北に存在しているのなら
ここ渋谷はある意味「聖地」のようです。
クリスマス記号に全て覆いつくされた風景にクラクラしながら
「ありがとうございましたー」「ありがとうございましたー」
と口慣れない台詞を何度もくり返すうちに
「ああ、やっぱり今日は何かに感謝する日なんだ」と
妙に思えてきます。
『お客様は神様です』というミスター・ハルオ・ミナミの名句も
このシチュエーションにおいては
何やらものすごく意味の深い啓示なのではないかと勘違いしそうです。


今日は世界中で鳥(または鶏)を食べながら
誰もが色々な感謝の言葉を口にしているのでしょう。
神様に。家族に。恋人に。あるいはお客様に(笑)。
そんなことを考えながらチキンを売り、
アップルストアって何処ですかねえ?」
「こちら右手をまっすぐ行って少し先の右側にございます」
なんてにこやかに道案内などをする一日なのでした。


通りの人の流れを定点観測するのは
滅法面白く、みんなの浮き足立った感じが目に見えるようです。
あと23時間ほどでこのハレの上にハレを重ねたような
キラキラした物語は終わってしまいますが。


すべてのクリスマスのキャストに。
スタッフに。傍観者に。
メリークリスマス!