椅子・ユーズド・想像

目黒に椅子を買いに。
先月からずっとひとり掛けのソファ(イージーチェア)を探しているのだけれど
なかなかいいモノが見つからない。
いや、もちろんいいモノは沢山あるんだけど
格好良くて、しかもこちらのオサイフ事情に優しいモノが見つからなかったのだ。


目黒通りのオサレ家具ストリートをひととおり歩いて、
先月も来た小さい家具屋へ。
ここはオーナーのお兄さんが一人でやっているこぢんまりとした店なのだけれど
品揃えや店の雰囲気が僕の好みでなんとなく気になっていた。
実は先月来た時にちょっと欲しくなったウェグナー風の椅子があって
それを再び見に来たのだが、店内に入ると他にもイイ感じの椅子が新参している。


僕がこの店を気に行ったポイントは、商品がいいということだけではなくて
オーナーのお兄さんの接客がとても感じ良いところだった。
ひとつひとつの椅子について、木材の種類や張り布のこと、
どういうところで仕入れてきたのか、自分はどこが気に入ってこの椅子を仕入れたのか、
…ということを丁寧に説明してくれる。
実際にその場でワックスを掛けて手入れの仕方を説明してくれる。
2つの椅子で迷っていると場所を動かして2脚並べて見せてくれる。


平日で客も少なかったし、そんなに大したことではないのかもしれないけど
こういうことで買う側は店を信用するし納得して買い物もできる。
某家具店ではほとんどの商品に
「手を触れないでください」
「座る時はスタッフに声を掛けてからにしてください」
という札がついていたりして、しかもその店員はツンケンしていたりして
ココは美術館かよ!とツッコミを入れたい気持ちになり買う気も失せたものだが
少なくとも、客として表面的に見る限りはどちらが愛情を持って椅子を売っているか明白である。


ユーズドのもの、特に家具を買うということは
ただ「商品を手に入れる」ということとは違う。
その椅子がどんな国で作られて、どんな街のどんな人に買われて、
どんな家庭の生活を過ごしてきたのか、どんなマーケットを旅して僕の手元に辿り着いたのか
その椅子の歴史に思いを馳せることがユーズドを手に入れる意味なんじゃないかと思う。
その想像のヒントを少し与えてくれる接客は好感がもてる。


結局迷ったのち、今日新しく見た方のデンマーク製の60年代の椅子を買うことにした。
配送の手続きをして支払いを終えて店から出るとき、店のお兄さんは
「ありがとうございました。ずっと大切に使ってやってくださいね」と言った。