Second Nature・白い雨・シリアス

吉岡徳仁ディレクション「Second Nature」展の
内覧会で21_21 DESIGN SIGHTへ。
http://www.2121designsight.jp/


垂れ下がった白いファイバーで埋め尽くされたホール天井の展示が圧巻。
まるでSFの世界のようだ。
写真では全然伝わらないので実際に行って見るべき。


僕は会場に入って上を見上げて、これは雨なのだと思った。
雨が世界に降って、地表に届こうとしている瞬間なのだ。


世界の一瞬を、誰もが生きている変容し続ける世界の一瞬を
止めて切り取る、ということ。
静止して留め置くことでかたちの無いものにかたちを与える、ということ。


僕はあらゆるデザイナーの中で倉俣史朗という人が一番好きなのだが
吉岡さんは現在のデザイナーの中では
(事務所直系だけあって)倉俣さんのエッセンスを
最も持っている人だなあといつも感じる。
吉岡さんのほうが少しドライで未来的でシリアスだけれど。

      • -


曲木の椅子にスチールワイヤーを巻きつけ燃やし、
黒く焼けて残ったワイヤーがかつてそこに在った椅子のかたちを留めている
倉俣さんの『ビギン・ザ・ビギン』という椅子。


1枚のガラス板を強化ガラスで挟んで
圧力をかけて、ひびが入ってガラスが粉々に割れる瞬間を止めて
テクスチャにしてしまった倉俣さんのテーブルやショップの壁。


ハニカム構造の薄い紙でできていて
人が座った痕跡がそのまま椅子の形状として固定される
吉岡さんの『ハニーポップ』という椅子。


こういう作品から受けるある種のシリアスさ。
今までの21_21での展覧会は
どこかしら可愛らしいユーモアのあるものが多かった気がするのだけれど
この展覧会で僕が感じたのは
今までになかったシリアスさで、
「デザイン/クリエイションによって何かが発見されて、表現されているのだけれど
それは世界に既に存在していて誰もが既に経験していることだ」
ということが純化されればされるほど
デザイナーが世界に向き合う視線はシリアスになっていくのだろう。

      • -


吉岡さんが会場の真ん中あたりにいらして
多くの人に囲まれて会話している。
見えない「ゆるやかな場の中心」がそこにあって、その周りを人が流れている。
その場に存在するすべての人々に
今にも届かんとしている白い雨の軌跡。
世界は動いていて、世界は止まっている。