屋上・避雷針・Carol King

仕事の休憩でよく屋上に上る。
co-labの入っているビルは築40年の古いビルだけど
内部はわりと綺麗にリノベーションされているのでそれほど古さが目立つわけではない。
しかし屋上は40年の雨風にさらされた歴史がむき出しになっていて
いい風合いに錆びたり汚れたりしている。


アップ・オン・ザ・ルーフ。
キャロル・キングの作品のなかで僕が一番好きな曲だ。
そういえば僕は屋上が好きなのだった。
大学に入学した翌日には一番高い12階建て校舎の屋上に上ってぼんやりと景色を眺めていたら
(大学で一番高い=その近辺で一番高い建物だったので見晴らしが素晴らしかった)
あやうく警備員に鉄扉の鍵を閉められそうになった。
マガジンハウスに出向して働いていたときは
マガジンハウス社屋の屋上に勝手に上ったりもした。
(こちらは特に眺めがいいわけではなかった)


屋上からあたりを見渡すと、
それぞれのビルのそれぞれの屋上にはいろんなものが乗っかっているのが分かる。
クレーン、給水塔、室外機、物干し台、
ペントハウス(不思議なことにオフィス街の古そうなビルの上に
人の住む気配があるペントハウスが建っていたりする。一体どんな人が住んでいるのだろう)
そして避雷針。
避雷針は当然のようにどのビルにも立っていて、
それは立っているというよりも刺さっているようにしか見えない。
細長い針だけを目で追うとかなり遠くまでその姿が見える。
もちろん高さはビルによってまちまちで鈍色の空をスクレイプするように続いている。


東京中のビルの避雷針をつないだら
空にどんな網模様がかかるのだろうかと想像してみる。
地形の高低とは違った標高差でうねるネット。
南東の方向を見やると、そのネットの頂点になるはずの
それ自体が避雷針のような真っ赤なタワーが遠くに見えるのだった。