ガウディとモンタネール、バルセロナ(スペイン点描その1)

恥ずかしながらモンタネールについてバルセロナに行くまで
ほとんど何の知識もなかった。
モンタネールはガウディと並び賞されるバルセロナを代表する建築家である。
資料によるとモンタネールは裕福な家庭に生まれ25歳で大学教授になり、
31歳で建築界に名を馳せ、
39歳で万博のトップ建築家としてパビリオンをいくつも手掛け、
老後は建築学校の校長や国会議員を歴任、とある。
まあ、いいとこのボンボンで人生何でも上手くいっちゃうヒトという訳だ。
苦労して学校を卒業し、質素な生活をしながら
サグラダファミリアの建築に後半生を捧げ、
最期は浮浪者のような格好で交通事故にあって
死んでしまったガウディとは本当に対照的。


そんなモンタネールの建築はとても華やかで
過剰なほどの装飾に溢れている。
もちろん華やかさの裏には、「スペイン政府の抑圧に対してひとこと言わせろや」的な
19世紀末カタル−ニャ芸術の政治的な意図というものもあるのだろうし、
後に政治家にもなるモンタネールにはよりそういう意図が大きいのかもしれない。
それがああいう色彩や装飾に昇華されるのが
スペイン人(いや、カタルーニャ人か)の面白いところではある。


僕らの泊まったホテルのすぐ近くに
モンタネ−ル作の「オスピタル・デ・サン・パウ」という病院があって、
世界遺産であると同時に現在も病院として利用されていた。
だだっ広いその病院の中はまるでおとぎ話のような建物ばかりで、
そこにパジャマ姿のおじいさんやら車椅子のおばあさんが散歩をしている光景は
燦々と降り注ぐ陽光とも相まって、なんだか天国のようであった(失礼)。


モンタネールと比較するとガウディの方は
よりストイックに建築を探究しているように見える。
サグラダファミリアはもちろん荘厳で素晴らしいがなにしろまだ工事中なわけで、
ガランドウの構内に入るとロープなどが張ってあり、
「ご迷惑おかけしております」というヘルメット姿のおじさんがお辞儀している立て札が
立っていてもおかしくない内観なのだが、
併設された博物館を見学するとガウディがいかに
コンセプチュアルに建築形態をとらえていたかが分かりとても面白い。


バルセロナの建築家といえばガウディ、と思っていたが
ガウディはあまりに唯一無比なオリジナリティで、
実はそんなに地域的必然性みたいなものはないのかもしれない。
乱暴な言い方をすれば、「この街だからガウディの建築が生まれた」という
建築と街の「よりそい」のようなものはあまり感じなくて
どちらかというと唐突に街角に現れるモニュメント彫刻、のような印象も受けた。
グエルという大金持ちのパトロンの庇護のもと
自分の建築哲学を追求していった建築(バカ)おじさんだったのかなあと
勝手に推測。勝手に納得。


まあ、そんなことを考えずに見ても
モンタネールもガウディも素晴らしいです。やっぱり。